着物を支える職人さん

<着物の仕立て>

 

どんなにすばらしい着物でも仕立が悪いと、とっても着にくい着物になって、 台無しになってしまいます。
 「石田和裁」は、全国でもトップクラスの技能を持った仕立て屋で、今の当主は三代目で、ご夫婦で頑張っておられます。私どもとは初代からのお付き合いで、技能は元より、 生き方や考え方にも感銘を受けます。

<刺繍>

 

刺繍(ぬい)は、染め上がった着物の最後の仕上げにする事が多く、 着物を生かすも殺すもここに掛かっています。 また、刺繍だけで模様を表す場合もあ ります。現在は、中国や韓国の安い刺繍もありますが、着物になったときの立体感や 意匠のすばらしさには、一日の長があります。吉田家は三代続いた刺繍(ぬい)の家 で、初代の方はもう少し長生きしていれば、人間国宝に認定されていたほどの名人 だったそうです。 (実際に話があったそうですが、その時すでに現役を引退していたため実現しなかったそうです)
 特に動物の表現に優れ、残っている作品を見ても、目を見張る物があります。  現代の当主も優れた技法の持ち主で、先代・先々代同様、鳥など動物を得 意としています。また、「相良ぬい」の技法も優れ、出来あがった着物に奥行き が出るのは、見ていて見事なものです。
 普通の刺繍屋ではしない、「縫い紋」も手がけ、6寸余りの中で、いろいろな色糸 を使った加賀紋を得意とし、表の着物に負けないだけの手の込んだワザを発揮します。

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<上絵>

 

着物には紋を入れる事があります。そのなかで、染めで入れる仕事をするのが、 上絵師です。
 紋を入れる着物は、主なものに、留袖・喪服・色無地・産着(祝着)・ 男性用紋付・ets
 その中でも、一番多い仕事は、紋の形に色が抜けいている所に、 輪郭線やシベをいれたり、割付をしたり。非常に細い筆で一気に 書きます。
 また、『刷り込み紋』といって、染料を使って紋を色で表現する事も あります。おもにお宮参りの産着に使ったり、白い着物(夏の麻)に紋を 入れる時にも使いますが、最近は少なくなってきた様に思います。
 また、加賀紋と言って色々な色を使って表現する事もありますが、 職人のセンスがとても大事になってきます。

 

最近お嬢さんが仕事を始められました。若い女性の感性を生かした仕事を期待しています。

<色炊き染め>

 

おもに色無地や八掛など無地染めをします。 小さな色見本を頼りにまったく同じ色になる様に染めていくには 長年の感がたよりです。
 地色を染めるやり方は、 染料の溶けた液に白生地を浸ける『焚き染め』 と、刷毛で塗っていく『引き染め』がありますが、色無地の場合はほとんど 『焚き染め』で染めます。『引き染め』は付下や訪問着などの友禅をした着物の 地色を染めます、この場合は染めあがりを『蒸し』しますが、その時色が 変わります、その変化まで計算して染めなければなりません。
 『中野』さんは、祖父の代からお願いしています無地染屋さんで、 現在の当主は六代目になります。お母さんは香袋作家で有名な 「中野ゆき」さんです。

<黒炊き染め>

 

黒染めも色染め同様に『引き染め』と『焚き染め』があります。 主に留袖や訪問着などの友禅をした着物は『引き染め』で染めます。 喪服や男物紋付を染めるときは『焚き染め』をします。
 喪服の場合、いきなり黒に染めるのではなく、まず紅や藍に染めてから 黒に染めます。いわゆる『紅下・藍下』と言われるものです。『紅下』は 赤みがかった黒で、室内でより黒く見える様に工夫したもので、主に 関西方面で好まれます。『藍下』は屋外でより黒く見えるようにと考え られたようで、関東方面で好まれます。
それ以外に最近では色々な名前を付けた『○○○黒』といわれる染めも 沢山出ていて、どれがほんとうに良いのか分からなくなって来ていますが、 一部には表面を樹脂加工して黒く見せているものもあるそうなので、 気をつけてください。

<地直し家(染色補正)>

 

一反の着物を作りあげて行く中で、いろいろ直して行かなければ ならくなる事があります。 例えば、柄が合うところで友禅の色が間違っていたり。地色に微妙に 濃淡があるとき。 そういうときに『地直し(染色補正)』をします。
 口で説明するのは難しいのですが、仕事の様子を見ていると、まるで 魔法のように思えます。また、着物を着ることによって出来るシミや 衿回り、袖口の汚れ、汗取り、カビ取り・・ets。多岐にわたる仕事が あります。

<湯のし>

 

字の通り、「湯」すなわち蒸気で着物を幅を揃えたり、シワを無くしたりする仕事です。そんな着物も湯のしなしには製品になりません。また染の途中段階でも何度もおこなうばあいもあります。

我が家でお世話になっている湯のし屋さんは、生地の風合いを生かした仕事をしてくださるので定評のある職人さんで、多くの白生地屋、染屋が出していて京都で一番信頼できる職人さんです。